抵抗膜方式(感圧式)は、産業用タッチパネルの方式として幅広く普及している方式です。ここでは、抵抗膜方式(感圧式)のパネルの構造やタイプごとの特徴、おすすめメーカーについてまとめています。
抵抗膜方式(感圧式)のパネルの構造とは?
抵抗膜方式(感圧式)パネルとは、ペンや指の圧力に反応し、接触箇所が通電することで位置を検出する方式のパネルのことです。
ATM、ゲーム機、PC、自動券売機、カーナビなど、幅広い用途で利用されています。
抵抗膜方式(感圧式)の長所・短所
抵抗膜方式(感圧式)の長所・短所を解説します。
長所
抵抗膜方式(感圧式)の長所を以下にまとめました。
- 水で揺れた手、手袋をした手などさまざまなもので操作できる
- 環境起因のノイズを抑えられる
- 抵コストで製造できる
抵抗膜方式(感圧式)の長所は、さまざまな物で押しても反応できることです。静電容量方式や超音波表面弾性波方式、電磁誘導方式などのタッチパネルは、タッチに使える物質が限られます。
抵抗膜方式(感圧式)の場合は、素手はもちろん、手袋をした手、濡れている手、ペンなどの絶縁性の物質でも操作可能です。また、抵抗膜方式(感圧式)は、水滴や異物、静電気や電圧といったノイズの影響を抑えられます。
他方式と比較して導入コストが割安な点も、抵抗膜方式(感圧式)の長所です。ただし、4線式(シングルタッチ)は安価でも、5線式・7線式になると配線が増える分コストがかさみます。
短所
抵抗膜方式(感圧式)の短所を以下にまとめました。
- 打鍵・擦傷に対して弱い
- マルチタッチできない
- 透過率が低い
- 大型化に不向き
抵抗膜方式(感圧式)の短所は、打鍵・擦傷に対して弱いことです。抵抗膜方式(感圧式)は、仕様上、パネル表面を頑丈なカバーで覆えません。パネル表面のガラスまたはフィルムは柔らかで、その上に形成されたITO膜が傷つくと検出エラーが起きる恐れがあります。特に、4線式(シングルタッチ)は、パネル表面のITO膜に位置を特定する配線が接続されており、損傷すると検出エラーが発生してしまいます。
特別な構造でない限りマルチタッチができない点や、パネル全面がITO膜で覆われているため透過率が低下しがちな点も、抵抗膜方式(感圧式)の短所と言えます。さらに、抵抗膜方式(感圧式)は大型化に不向きです。位置の検出には電極層周辺に接続された配線を使うため、大型化するほどタッチした位置の特定が困難になります。
抵抗膜方式(感圧式)の用途
抵抗膜方式(感圧式)は、FA用産業機器・ATM・ゲーム機・PC・自動券売機・カーナビなど、幅広い用途で利用されています。
抵抗膜方式(感圧式)は、屋内への設置がおすすめです。上述したように、抵抗膜方式(感圧式)のパネル表面は、打鍵による損傷に弱い傾向です。屋外に設置すると、雨風や飛来するゴミやホコリなどの影響で簡単に傷ついてしまいます。加えて、抵抗膜方式(感圧式)の多くはマルチタッチができないため、ATMなど単純な操作を求められるシーンにおすすめです。
手袋をしていても操作できる、水滴や異物に操作の邪魔をされにくいといった部分は、抵抗膜方式(感圧式)のメリットです。工場などで見られるFA用産業機器などには、操作ミスによるリスクを低減するために抵抗膜方式(感圧式)を選ぶとよいでしょう。
抵抗膜方式(感圧式)のアナログとデジタルタイプ
抵抗膜方式(感圧式)には、大きく分けて、アナログとデジタルタイプの2種類があります。アナログには、アナログシングルタッチタイプとアナログマルチタッチタイプの2種類があり、それぞれ位置検出の方法が異なります。
アナログシングルタッチタイプ
アナログシングルタッチタイプは、上部と下部の両方に透明電極を形成し、一方がX座標、もう一方がY座標を構成することでタッチした位置を検出する方式のことです。4線式、5線式、7線式などの種類があります。
4線式(シングルタッチ)
4線式(シングルタッチ)は、抵抗膜方式(感圧式)のスタンダードな方式です。上部基板にX軸、下部基板にY軸の電極を配置し、それぞれの電極によって、X軸・Y軸の位置を検出しています。
5線式(シングルタッチ)
5線式(シングルタッチ)は、4線式と異なり、X座標・Y座標の位置検出を下部基板に集約しています。上部基板では、電圧の検出を行います。下部基板に位置検出の機能が集約されているため、上部基板のITOフィルムが傷ついても、位置検出機能が失われないというメリットがあります。
7線式
7線式は、FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)が提供する抵抗膜方式(感圧式)です。5線式と同じくX座標・Y座標の位置検出を下部基板に集約しているため、耐久性が高めです。その上、下部のガラス基板に搭載したダイオードによる電圧印加・補正により、検出精度も良好です。
アナログマルチタッチタイプ
アナログマルチタッチタイプは、4線式(シングルタッチ)をベースにマルチタッチ機能を追加したものです。4線式(シングルタッチ)と基本的な構造は同じですが、検出面をセル状に分割することで仮想的に複数のタッチパネルを構成し、マルチタッチを可能にしています。
4線式(マルチタッチ)
4線式(マルチタッチ)は、4線式(シングルタッチ)と位置検出の原理は同じです。それに加え、センサーをセル状に分割し、それぞれを独立したタッチパネルとして機能させることで、異なるセル間での同時入力を実現しています。
デジタル(マトリクス)タイプ
デジタル(マトリクス)タイプは、上部基板と下部基板のそれぞれに短冊状の電極を構成し、各電極の片側に配線を配置しています。タッチした時のX座標・Y座標の導通があったポイントを読み取り、位置検出を行います。
まとめ
抵抗膜方式は、タッチパネルを押した際の圧力によって位置が検出される方式で、幅広い用途で使用されています。
抵抗膜方式以外にも、産業用タッチパネルに用いられる方式は複数あります。
それぞれの方式がどのような特長を持つのかを把握し、求める仕様に合ったタッチパネルを選ぶようにしましょう。
抵抗膜方式に対応している産業用タッチパネルメーカー
産業用タッチパネルメーカー3社
本サイトでは、2023年1月20日時点で「産業用 タッチパネルメーカー」でGoogle検索し100位までに公式サイトが表示されるメーカーのうち、産業用タッチパネル製造に関する情報が明確であるメーカー21社を調査。
その中で、総合力に関する「品質」「対応力」「実績」に関する情報が明確に公式サイトに記載されているメーカー、かつ
「デバイス(タッチセンサ)」から製造しているメーカー3社を紹介しています。
すべて自社開発・製造
ディ・エム・シー
センサ
ション
- 抵抗膜方式
- スマホライクな軽い操作、濡れた手、手袋、マルチタッチジェスチャに対応
- 静電容量方式
- 高い操作性・耐ノイズ性能、手袋、ペン対応
大型サイズにも対応
グンゼ
ション
- 抵抗膜方式
- ※現在、抵抗膜式に対応していません。
- 静電容量方式
-
薄くて、軽いフィルム構成
工場電源ノイズ対応
5線式・7線式にも対応
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)
ション
- 抵抗膜方式
-
特殊ペン、手袋、濡れた指に対応
軽快な操作性、2点タッチ操作
- 静電容量方式
- 要問合せ
- 抵抗膜方式
- スマホライクな軽い操作、濡れた手、手袋、マルチタッチジェスチャに対応
- 静電容量方式
- 高い操作性・耐ノイズ性能、手袋、ペン対応
- 抵抗膜方式
- ※現在、抵抗膜式に対応していません。
- 静電容量方式
-
薄くて、軽いフィルム構成
工場電源ノイズ対応
- 抵抗膜方式
-
特殊ペン、手袋、濡れた指に対応
軽快な操作性、2点タッチ操作
- 静電容量方式
- 要問合せ
総合力で選ぶ
産業用タッチパネルメーカー3選をもっと詳しく紹介
ディ・エム・シー
- 抵抗膜方式でスマホのように自由に操作したい
- ノイズ・温度・紫外線など、過酷な環境に対する耐久性がほしい
- 使用シーンに合った提案・調整をしてほしい/相談したい
- モジュールやユニット(完成品)がほしい
ディ・エム・シーが対応している方式/対応製品
(デバイス)
ディ・エム・シーのタッチパネルの強み
センサ、コントローラー、デバイスからモジュール、ユニット(操作表示機、タッチパネルモニター等の完成品)までトータルで提案。ガラス×フィルム、フィルム×フィルムなど、条件や用途に合わせて柔軟に対応、多様な「+α」の機能を付与できます。予算に合わせた価格対応も可能。
抵抗膜方式から静電容量方式への切り替えが増えている中、ノイズに影響されにくい抵抗膜の長所を生かしたまま、設計を変えずに軽い操作感とマルチタッチジェスチャ操作を実現。フリック、パン操作、ピンチ、ターン操作など、軽いタッチでスムーズな操作ができます。
使用温度範囲-40℃~80℃保証、過酷な野外使用における耐候性、紫外線吸収特性、水誤動作防止機能、耐衝撃ソリューション、堅牢性、過酷な環境やノイズにも対応できる静電容量方式などのソリューションを提供。使用シーンに合わせて優位性を高めるカスタマイズやチューニングが可能です。
ディ・エム・シーの
サイズ/バリエーション
- 抵抗膜方式
バリエーション…シングル/マルチ、4線式/5線式 5シリーズ計53タイプ
サイズ…3.8~21.5(W)インチ
ディ・エム・シーの
サポート
- センサもコントローラーもすべて一貫で開発・製造しており、柔軟なチューニングができる。
現地対応も可能、1社でトータルサポート。 - 公式サイト上にサポートページ、FAQ、仕様書など、タッチパネルを活用するうえで必要となる各種資料を豊富に用意。
ディ・エム・シーのタッチパネルの実績
「抵抗膜方式」で長期にわたる開発・製造実績があり、幅広い産業分野に製品提供を行っています。 「静電容量方式」は2007年から製造。国内にとどまらず、世界20ヶ国以上に輸出を行っています。(2023年4月時点)
株式会社ディ・エム・シー(DMC)は、産業用タッチパネルおよび関連製品の開発・製造・販売を専門に手がけているメーカーです。創業以来「多品種少量生産」「長期安定供給第一」のビジネスモデルを貫き、タッチパネルに関する幅広いニーズに応えられるように事業を拡大。時代のニーズを絶えずキャッチし、幅広い産業分野で長年培ったノウハウを活かし、さらなる新製品の開発や販路拡大へとつなげています。
ディ・エム・シーの会社情報
本社所在地 | 東京都港区高輪2-18-10 高輪泉岳寺駅前ビル11F |
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設立年 | 1973年設立 |
事業展開 | タッチパネル及び関連機器の開発製造販売 |
問合せ先 | 03-6721-6731 |
グンゼ
- 非接触タイプのタッチパネルがほしい
- 23インチ以上の大型のタッチパネルがほしい
- 大型タッチパネルの視認性を上げたい
グンゼが対応している方式/対応製品
グンゼのタッチパネルの強み
もともと抵抗膜方式の開発・製造を行っていましたが、現在は静電容量方式のみに注力。サイズは7~21.5インチの標準品のほかに、デジタルサイネージなどの用途に有効な23~65インチという大型サイズにも対応。目的に合わせて選ぶことができます。
手を近づけるだけで最大約5cmの距離を検知できる、非接触型の産業用タッチパネル。手袋を付けていても検知可能であるほか、水滴がかかっても誤作動を起こしにくいことを強みとしています。
タッチパネルには内製のフィルム電極が搭載されており、一般的なガラス製品と比較すると薄くて軽いのが特徴。高耐光のフィルム電極のため、太陽光や紫外線による画面の劣化を抑えます。
グンゼの
サイズ/バリエーション
- 抵抗膜方式…現在対応していません。
グンゼの
サポート
- 専門の技術者がユーザーの利用環境・用途に合わせたファームウェアチューニングを行い、タッチパネルに機能を付与。
- 技術面・品質面の課題についても、各部門のエンジニアが随時必要なサポートを提供。
グンゼのタッチパネルの実績
パンスト包装用のフィルムの開発・製造からプラスチックフィルム事業を生み、透明導電性フィルムの開発につながり、1986年に本格生産をスタート。タッチパネルメーカーとして25年以上の歴史をもっています。(2023年4月時点) 現在は静電容量方式に注力、国内のほか、中国とアメリカに生産拠点を広げています。
アパレルメーカーのブランドイメージが強いグンゼですが、アパレル業だけでなく、製品の包装フィルムの自社開発にも積極的に取り組んでいます。機能性プラスチックフィルムの開発も行っており、電子部品事業部では産業用タッチパネルを提供していることが特徴。長い歴史の中で培った耐久性、対指紋、低反射といった技術がグンゼの産業用タッチパネルに活かされています。
グンゼの会社情報
本社所在地 | 京都府綾部市青野町膳所1番地 |
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設立年 | 1985年設立(電子部品事業部) |
事業展開 | タッチパネル製品の開発・製造・販売 |
問合せ先 | 0120-167-874 |
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)
- 筆記寿命・打点寿命ともに長いタッチパネルがほしい
- スタイリッシュな製品に仕上げたい
- フルカスタム仕様のタッチパネルがほしい
- 抗菌・抗ウイルスの機能がほしい
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)が対応している方式/対応製品
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)のタッチパネルの強み
「7線式」を提供
抵抗膜方式のタッチパネルでは、4線式、5線式のほか、独自の抵抗膜タッチパネル方式、アナログ7線式にも対応。7線式は一般的な4線式に比べて筆記寿命・打点寿命ともに長いのが特徴で耐久性と位置精度も両立。透明感と滑り性をより向上させるフィルムのオプション追加も可能です。
フラッシュサーフェス
組込まれる筐体とタッチパネルに段差がないフラットな外観のフラッシュサーフェスタッチパネルを提供。タッチパネル製品をスタイリッシュなデザインにしたい場合に向いています。手袋や濡れた手でも操作できる抵抗膜式で、額縁部分には独自の配線によりスイッチの設置が可能。ロゴ印刷もできます。
抵抗膜式タッチパネルにおいて、ISO規格に準拠した「抗菌(ISO22196)」「 抗ウイルス(ISO21702)」試験に適合したフィルムを採用。タッチパネル上に抗菌・抗ウイルスコートフィルム追加する方法と、ITOフィルムに抗菌・抗ウイルス機能を追加する方法から選択できます。
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)の
サイズ/バリエーション
- 抵抗膜方式
バリエーション…4線式、5線式、7線式 計23タイプ
サイズ…5.7~22(W)インチ
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)の
サポート
- 製品を使用する際の安全に関する注意事項や各種サポート情報がまとめられており、参照できる。
- マニュアルやソフトウェアのダウンロードが可能。
- タッチパネル専用のお問合せフォームを用意。
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)のタッチパネルの実績
もともと抵抗膜式タッチパネルの開発・製造に強みを持っており、近年の静電容量方式のニーズを受けて2016年に開発に着手、現在は、マレーシアと中国に開発・製造拠点を置き、事業を拡大しています。
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)株式会社は、各種電子部品の製造および販売を行っているメーカーです。リレーをはじめとするスイッチング・デバイス関連製品、タッチパネルやキーボードのほか、ヒューマン・インターフェース・デバイス関連製品を取り扱っています。製造・販売ルートとして国内はもちろん海外にも拠点を配置。電子部品事業をグローバルに展開しています。
FCLコンポーネント(旧富士通コンポーネント)の会社情報
本社所在地 | 東京都品川区東品川4-12-4 品川シーサイドパークタワー |
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設立年 | 2001年創立 |
事業展開 | タリレー、キーボード、タッチパネル、サーマルプリンタ、無線モジュール、KVMソリューション、複合デバイス(ユニット製品)他の開発・製造・販売 |
問合せ先 | (問合せフォームのみ)https://www.fcl.fujitsu.com/contact/form/lvr/ |
- 静電容量方式のタッチパネルの特徴、メリット・デメリット、対応メーカーを見る
- 赤外線方式のタッチパネルの特徴、メリット・デメリット、対応メーカーを見る
- 超音波表面弾性波方式(SAW)のタッチパネルの特徴、メリット・デメリット、対応メーカーを見る
- 電磁誘導方式のタッチパネルの特徴、メリット・デメリット、対応メーカーを見る
産業用タッチパネルメーカー3社
耐久性や環境適応性に優れ、工場や屋外使用でも安心。互換性も高く予算に合わせた開発提案が可能。
- 工場FA機器
- 重機
- 屋外標識
- 倉庫用ロボット
など
高機能フィルムの開発が得意で、これまで難しかったITOフィルムの大型化に成功。最大65インチ対応で様々な表現が可能に。
- サイネージ
- フロアガイド
- アーケードゲーム
など
抗菌・抗ウイルス機能付き機能や写像性を高めるニュークリアフィルムを開発し、衛生的で快適な操作性を実現。
- 検査機器
- 臨床現場
- 美容成形
など